
リモートワークが普及しながらも出社の機会が増えている昨今、総務のもとには働き方の変化に伴う悩みが多く寄せられるようになりました。
「会議室は空いているように見えるのに、予約しようとするとすでに埋まっている」
「オフィスに人が戻ってきているのに、部署をまたいだつながりを感じられない」
「雑談する場所がなく、コミュニケーションのきっかけがつかみにくい」
こうした声は、多くの企業で共通して耳にするものです。
一見すると日常の些細な不便に見えますが、積み重なることで業務効率や人間関係に影響が出かねません。
働く場所を柔軟に選べるようになった今、オフィスは「作業をするための場所」から「協働を促し、関係性を育てる場所」へと役割がシフトしています。
にもかかわらず、出社してもモニターに向かって黙々と作業する時間が大半を占め、部門をまたいだ会話や偶発的なコミュニケーションが生まれにくい。
そんな状態が続いているオフィスも少なくありません。
こうした環境が続くと、オフィスの使われ方そのものが固定化し、日々の業務の中で、次のような支障が表面化し始めます。
「実際に空いている会議室があるのに、予約で埋まっていてすぐに集まれない」
「社内にどんな人物がいるのか社員同士が把握していない」
「必要最低限の会話しか生まれず、組織が硬直化する」
といった状況が定着し、ちょっとした相談や偶発的な出会いから生まれるはずだったビジネスチャンスが損なわれてしまいます。
では、どうやってこれら課題に解決の糸口をつかむべきなのでしょうか。
本記事では、総務が主導してレイアウト改善を進める際の考え方や、具体的なステップをわかりやすく整理してご紹介します。
目次
では、具体的にどのような視点で改善を進めればよいのでしょうか。 多くの失敗例に共通するのは、「席数最大化のために画一的な席で埋める」「オフィスの隅にリフレッシュスペースを作る」といった、家具ありきで考えてしまうことです。
レイアウト改善とはただ家具を配置することではありません。
このように、働く人の行動に向き合って、意図的に環境や動線を設定することこそが、レイアウト改善の本質です。

たとえば、動線上に共有スペースを配置するだけで、部署を越えた会話が自然と生まれます。反対に、集中作業が必要なエリアでは、視線や音のコントロールが欠かせません。「どんな家具を置くか」ではなく、「どんな環境を創り出すか」でレイアウトを考える必要があります。
この全体計画を担えるのが総務です。
鍵となるのは、現場の声から「真の課題」を読み解く力です。 よくある「隣の部署が何をしているか分からない」という課題に対し、単に交流会を企画するだけでは根本解決になりません。
そうではなく、「自然と顔を合わせるように、メインの動線をあえて交差させるレイアウトにする」といった、空間が働き方に良い影響をもたらす提案が求められます。経営層にはそれが組織の活性化に繋がることを、現場には使い勝手が良くなることを伝え、双方を動かしていくのです。
調整や予算確保など、泥臭い仕事も増えるでしょう。ですが、そうした「仕掛け」を総務が主導することで、組織は確実に変わっていきます。次章では、そういった「壁」について整理しながら、乗り越えるためのポイントを解説します。
社内のレイアウト改善を進めようとすると、多くの企業は計画段階で共通した課題に直面します。
総務の取り組みは、どのような点でつまずきやすいのでしょうか。
社員からは
「埋まっていると思った会議室がなぜか空いている」
「なんとなく声をかけづらい雰囲気が社内にある」
といった声が上がることがあります。
しかし、この“なんとなくの不便さ”をそのままにしていては、改善につなげることはできません。
会議室や席の利用状況、どこに人が集まりやすいのか、どの動線が活発か・閑散かなど、実態をデータとして可視化して初めて、課題の正体が明らかになります。
感覚や印象ではなく事実をそろえることが最初のハードルになりがちです。
現場は「もっと使いやすくしてほしい」と機能性の向上を求める一方、経営層は投資対効果を重視するため、議論が平行線になりやすいのが実情です。
他にも「集中ブースを増やしたい」という声と「打ち合わせスペースを確保したい」という声が同時に出ると、優先順位の判断が難しくなります。
総務は双方の意見の背景をくみ取りつつ、現実的な落としどころを組み立てる必要があります。
まさに「調整の専門家」としての力量が問われる場面です。
オフィスの全面改修となれば時間も費用も大きく、すぐに踏み切れない企業が多いのは当然です。
ではレイアウト改善を先送りにするしかないのでしょうか?
——答えはNOです。
近年は家具のサブスクリプションなど、“小さく試せる”改善手法が増えてきています。
といった部分的なアプローチであれば、現場の反応を確かめながらスピード感を保って進められます。
小さな成功体験は、社員からの合意も得やすくなるでしょう。
これらは、多くの企業がレイアウト改善に取り組む際に共通して直面する課題です。
では、実際に運用を担う側はどのような工夫をしているのか。
次章では、オフィスの現場を管理するインターオフィスの総務担当者に、リアルな実情を聞いていきます。
インターオフィス東京本社は、実際に社員が働きながら、その様子をお客様に見てもらう「ライブショールーム」として稼働しています。 2017年の移転当初は大きなテーブルを画一的にレイアウトしたフリーアドレス席でしたが 、現在は「本来のフリーアドレスらしさ」を重視し、ハイテーブルやソファ席など、多様な家具から働く環境を選べる構成になっています 。

一見、理想的な「働き方に合わせて環境を選べるオフィス」に見えますが、その裏側には、運用を支える総務と社員の地道な試行錯誤がありました。現場を管理する総務担当者はこう語ります。
「家具などを動かして自由に使えるということは、放っておくと崩れていくということでもあります。椅子の戻し忘れや、なんとなく放置された備品で、せっかくの空間意図が損なわれてしまうことが課題でした」
そこで重要になったのが、「レイアウトの意図を伝えること」と「リセットの文化」です。
ただ「ここで仕事してください」と言うだけでは、社員は動きません。 「なぜここに背の高いテーブルがあるのか(立ち話で打合せを素早く終わらせるため)」 「なぜここは通路が広いのか(偶発的な出会いを生むため)」 といった“家具配置の意図”が新入社員などに十分に伝わっていないと、使い方が雑になり、結果として場が荒れてしまうことがわかりました 。 逆に言えば、総務がこの「意図」をきちんと入社時にアナウンスすることで、社員の使い方は変わり、空間の機能が最大限に発揮されるようになります 。
レイアウトを自由に変えられるからこそ、「使い終わったら本来あるべき場所に戻す(リセットする)」というルールが不可欠です 。 インターオフィスでは、見栄えを重視するショールームという特性上、特に高い基準で美観維持が求められますが、これは一般企業のオフィスでも同様です。 「次に使う人が気持ちよく使えるデフォルト状態」を定義し、共有すること。この積み重ねこそが、使いやすく気持ちの良いオフィスを維持する秘訣なのです 。
レイアウトを変えたとしても、そこで働く人の意識が変わらなければ、いずれ元の状態に戻ってしまいます。だからこそ、インターオフィスでは現在、ハード(家具)の設置だけでなく、ソフト(人の意識)への働きかけを強化しようとしています。
現在、社員の空間感度を高めるため「ディスプレイ・スタイリング講座」の導入を検討しています 。 ここでは、外部講師から「美しく機能的に見せる技術」を学ぶだけでなく、総務担当者が「レイアウトの意図や維持の苦労」といった背景(ストーリー)を共有することも重視しています。スキルと背景の両面を伝えることで、社員自身がオフィスを使いこなす力を育てていく計画です。
運用イメージがつかめたところで、実際に自社でレイアウト改善進める際の順序を見ていきましょう。 いきなり全体を変えるのではなく、以下のステップで「小さく」始めるのが成功のポイントです。
まずは、今のオフィスが“どう使われているか”を事実として把握するところから始めましょう。
「会議室が足りていないと言われるが、実際どの時間帯で不足が発生しているのか分からない」
といった悩みも、データを取らない限りは状況がつかめません。
席の利用率、会議室の稼働状況、社員がどこに集まりやすいかなど、普段は可視化されない行動を記録することで、改善ポイントが明確に浮かび上がります。
オフィス内で定点撮影するだけでも記録が取れるでしょう。
「そもそもなぜ改善するのか?」
ここが曖昧だと、レイアウトは“ただ整えただけ”のものになってしまいます。
「集中環境を強化したい」のか、「部署を横断した交流を促したい」のか、あるいは「オンライン会議と対面業務を両立しやすくしたい」のか。
改めて「どんな働き方を実現したいのか」を明確にして向き合うことで、レイアウトの方向性がしっかりと定まります。
またそれぞれの要望に優先順位をつけて、レイアウト改善全体の目的を設定すると、判断が必要な時に手助けになります。
いきなり全体を変えようとすると、コストも時間もかかってしまいます。
そこで、まずは「小さく動いてみること」が効果的です。
家具のサブスクリプションや、1エリアだけのレイアウト変更など、コストを抑えて実験的に改善を試していくことで、現場の反応を確かめながら次のアクションを組み立てられます。

「この席の並びにしたら、打ち合わせがしやすくなった」
といった現場の声が出てくると、組織の理解も一気に進むことでしょう。
改善は“やって終わり”ではなく、空間を育てていくプロセスです。
社員の声を集め、実際の使われ方を踏まえて柔軟に見直すことで、より働き方に合った空間へと更新されていきます。
この「試す → 反応を見る → 直す」というステップは、総務がリーダーシップを発揮しやすい取り組み方でもあります。
これら4つのステップは、大規模改修を前提としたものではありません。
むしろ、大きな計画より小さな改善の積み重ねこそが、社内の納得感と実感を生むという考え方に根差しています。
オフィスレイアウトは、単なる設備配置ではなく「組織の活動をデザインする仕組み」です。 どのように座り、出会い、話し、働くか──そのすべてがその場所の環境に左右されます。だからこそ、総務が小さな変化を積み重ね、オフィスを““より良く働く場”へと育てていくことに大きな意味があるのです。
近年は家具のサブスクリプションなど、リスクを抑えて「小さく試す」環境も整っています。ほんの少し動線を動かすだけで、会話が生まれ、組織の風通しは確実に変わります。
いきなり大規模な改修を行う必要はありません。完璧な計画がなくても構いません。まずは手の届く範囲から動いてみること。 その一歩が、オフィス改革を確実に前へ進める力になります。
インターオフィスでは、設計・施工から家具の導入・交換までをワンストップで支援しており、「まずは1エリアだけ改善を始めてみたい」「予算を抑えて検証してみたい」といった細かなご相談も幅広く承っております。 まだ計画がふわっとした段階でも構いません。ぜひお気軽にお問い合わせいただき、未来の働き方を共にカタチにしていければ幸いです