このプロジェクトの中核にあるのは、オフィス空間の再定義です。「OPENNESS=開かれた空間で人と人が自由につながること」、「WELLNESS=健康な体と心でいられること」。その両立を目指して、空間全体のあり方がデザインされました。働き方が多様化する今、人が自然に集い、心地よく過ごせる場の重要性が増しています。
オフィスにおいて貴重な「窓辺」というリソースを、個室で囲い込むのではなく、パブリックスペースとして開放することで、誰もが光や景色を享受できる空間へと再構成しました。2面に広がる眺望を最大限活かすことで、自然と人が集まり、自由につながる場が生まれています。視覚的な開放感が、心身のリフレッシュにも寄与しています。
壁・床・天井にグレーを用いた統一感のある空間構成としながら、それぞれの面で異なるテクスチャーを持たせることで、均質ではない豊かさを生み出しました。無機的になりがちなグレーの空間に、木材のあたたかさ、ファブリックの柔らかさ、アルミの硬質感、タイルの清涼感など、多様な素材を織り交ぜています。それによって空間は場所ごとに異なる表情を持ち、使う人の感覚に寄り添います。
この空間で目指したのは、視覚的・身体的な快適性にとどまらない、“感覚的な心地よさ”です。自然光の届く場所で、素材の手触りや空間の抜けを感じながら働くことは、知らず知らずのうちに人の創造性や対話を育みます。働くことが日常であるならば、その日常を少しでも豊かにするために、空間の力ができることは多い——そうした視点が全体の設計思想に貫かれています。
このプロジェクトは、Design for Asia Awards 2020(DAFアワード)においてMerit Awardを受賞しました。
アジアにおける優れたデザインとして評価されたことは、機能や意匠だけでなく、空間がもたらす体験や価値に光が当てられた結果でもあります。
「働く」という行為の質を高める空間のあり方を、今後も探求していきます。
プロジェクトメンバー
パートナー